欧州のAIクラウドは、地域内のコンピューティングインフラを拡充するとともに、特化型モデルサービスや、AIエージェントによるツール・業務システムの利用を制御する仕組みを加えている。NVIDIAのパートナー最新情報では、Nscaleによる電力制約下での推論テスト、Mistralによる2027年のVera Rubin導入計画、OpenShell Reference Architectureへのエコシステム支援など、完了したテスト、すでに利用されているサービス、今後の導入計画が紹介されている。
主なポイント
- Nscaleは、割り当てられた電力の予算を変えずに、GPU数を37%増やし、推論の総スループットを約50%高めるテストを実施したと報告した。
- パートナー各社は地域内のインフラと特化型サービスを組み合わせている。例として、CodeRabbitのコードレビュー向けルーティングモデルやNebiusのロボティクスプラットフォームがある。
- OpenShellの支援企業は、ソフトウェアとハードウェアを通じたエージェントのアクセス境界の確立を目指している。パートナーによる支援は、顧客への導入完了とは異なる。
目次
欧州のAIクラウドが電力制約に直面
この拡大は、単にコンピューティング機器を増設することではない。NVIDIAは、AIファクトリーの拡大に伴う制約として電力を挙げており、既存の電力割り当ての範囲内でどれだけ有用な処理を実行できるかが、処理能力の計画において重要になっている。
Nscaleが報告したテストは、具体例を示している。NVIDIA GB300 NVL72システムを用い、DSX MaxLPSによって、割り当てられた電力の予算を変えずにGPU数を37%増やし、推論の総スループットを約50%高められることを実証した。これらの結果はテスト構成に関するもので、Nscaleの全施設で改善が測定されたことを示すものではない。
Nscaleは、最先端モデルのトレーニングと本番環境のワークロード向けにVera Rubinインフラを導入する計画で、欧州5市場での拡大も進める。一方、Crusoeは、推論能力を利用者に近づけることを目的とした、Vera Rubinプラットフォーム向けの液冷式モジュラーAIファクトリー設計「Spark」を開発している。
対象地域は欧州以外にも広がる。NVIDIAによると、Aleria、Cassava Technologies、Firebird、G42、Radiant、SWI Compute、Vultrなどのパートナーが、北欧、アフリカ、中央アジアでもインフラの開発・拡大を進めている。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| Nscaleの電力効率テスト | DSX MaxLPSを使用し、割り当てられた電力の予算を変えずに、GPU数が37%増加し、推論の総スループットが約50%向上したと報告。 |
| Mistralのインフラ | Vera Rubinの導入は2027年を予定。Mistral Large 4は、Mistralが運営する欧州のデータセンターに設置された3,800基のGrace Blackwell GPUでトレーニングされた。 |
| CodeRabbitのルーティングモデル | ルーティング一致率は75.8%から80.7%に上昇し、評価対象のワークロードでは推論コストが推定50%減少。 |
| Nebiusの小売業向けエージェント | 在庫、店舗運営、ファインチューニングを対象とするBlueprintが早期アクセスで提供開始。 |
| OpenShell Reference Architecture | GTC Berlinで発表され、パートナーの支援を受ける。ランタイムソフトウェア、CPU、DPUにまたがるエージェントの境界を連携させる設計。 |
利用可能、テスト済み、計画段階のものは何か
地域クラウドのパートナーとエージェント制御に関するNVIDIAの報告では、複数の異なる進捗段階がまとめて紹介されている。それらを区別することは重要だ。本番環境で稼働中のモデル、早期アクセスのサービス、将来のハードウェア導入では、顧客がすぐに利用できる度合いが異なる。
Mistralの拡大計画は、この違いを示している。同社のVera Rubinインフラは2027年の導入を予定している。一方、NVIDIAによると、Mistral Large 4はMistralが運営する欧州のデータセンターに設置された3,800基のGrace Blackwell GPUでトレーニングされた。モデルの開発は完了したと説明されているが、次のインフラ導入はこれからだ。
VerdaもVera Rubinの導入を計画しているが、NVIDIA NemotronとCosmosのオープンウェイトモデルはすでに本番環境で稼働している。また、推論最適化にはオープンソースフレームワークのDynamoを利用している。
特化型サービスで地域内の処理能力を活用
開発者にとって実務上の論点は、追加されたインフラが何を支えるのかということだ。パートナー最新情報では、コンピューティング能力だけを完成品として提示するのではなく、コードレビュー、ロボティクス、小売業向けエージェント、企業向けモデルサービスが挙げられている。
Basetenは、CodeRabbit向けにNemotron 3.5 Lightningを用いた特化型コードレビュー・ルーティングモデルを開発した。教師ありファインチューニングと強化学習を経て、ルーティング一致率は75.8%から80.7%に改善し、評価対象のワークロードでは推論コストが推定50%減少した。このコスト数値は当該ワークロードに関する推定値であり、あらゆるモデル利用で一般的にコストが減少することを示すものではない。
NebiusはNVIDIA Groq 3 LPXを採用し、Spectrum-X Ethernetネットワーキングを使用して、自社のToken Factoryプラットフォーム上でVera Rubin NVL72と統合している。NVIDIAによると、この組み合わせにより、マネージド型サーバーレスと専用エンドポイントを通じて、低レイテンシが求められるアプリケーションやエージェント型システムのトークン生成が高速化される。
Nebiusは、Rhoda AI、RoboForce、Sereactなどのロボティクス企業が利用するPhysical AI Workbenchも提供している。在庫、店舗運営、ファインチューニングを対象とするNVIDIAの小売業向けエージェントBlueprintは、早期アクセスが始まっている。
FireworksとEra4は別の方法を取っている。モデルのトレーニング・推論サービスと、Era4のチェスターフィールド施設における液冷式Blackwell Ultraの直接利用を組み合わせる。同社間のパートナーシップは、金融サービス、保険、ライフサイエンス分野における企業向けアプリケーションの計画を支援する。
ソフトウェアとハードウェアにまたがるエージェント制御
AIモデルを業務ツールに接続する場合、十分なコンピューティング能力の提供とは別に、組織にはエージェントが何にアクセスし、何を実行できるかを定義して徹底する仕組みが必要となる。GTC Berlinで発表されたOpenShell Reference Architectureは、導入スタック全体にわたるこうした境界に対処する設計だ。
このアーキテクチャでは、各コンポーネントに異なる役割を割り当てている。Vera Rubin NVL72がモデルの推論を担い、OpenShellに対応したVera CPUがエージェントのハーネスとツール利用を支え、NVIDIA Sentryを実行するBlueField-4 DPUがシリコン上での強制適用を担う。OpenShellのセキュア・ランタイムソフトウェアが、アーキテクチャの基盤となる。
支援企業には、Baseten、CoreWeave、Crusoe、DigitalOcean、Fireworks、Nebius、Nscale、Vultrなどのクラウド・モデルサービスプロバイダーが含まれる。報告で説明されているのは、安全なエージェント導入を可能にすることを目指したエコシステムの支援であり、名前が挙がったすべてのパートナーで導入が完了したことを示すものではない。
結論
今回の最新情報は、地域内のコンピューティング投資を具体的なワークロードやエージェントのアクセス制御と結び付けている。最も確かな根拠は、測定済みのテストとすでに利用されているサービスにある。Vera Rubinの導入計画やOpenShellの幅広い採用は、完了した処理能力ではなく、次の段階を示している。
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