NVIDIAが2026年10月22日に発表した報告書によると、欧州ではAIプロジェクトが医療画像、雇用事務所、政府のコラボレーションツールへと広がっている。これらの取り組みは、オープンモデルと現地で管理するインフラを組み合わせているが、公開済みデータセットや利用可能な調達枠組みから、開発中のシステムまで、進捗状況はさまざまだ。
主なポイント
- 欧州各地の公共部門の取り組みでは、インフラ、機微情報、モデルガバナンスの管理が重視されている。
- ポーランドとドイツのプロジェクトには、雇用サービス、医療画像、機密情報を扱う業務向けに開発中のシステムが含まれる。
- 地域に即した合成人物データセットにより、開発者は実在する人々の個人データを使わずに、さまざまな人口集団を対象にモデルを評価できる。
目次
- 欧州のAIプロジェクト、導入と並行してガバナンスを重視
- ポーランド、医療・雇用システムを開発
- ドイツ、内部向けアシスタントと機密業務に取り組む
- 合成人口データで地域に即したモデル検証を支援
- フランスが調達ルートを開き、ギリシャがインフラを構築
- Codefest、公共部門でのさらなる活用を支援
- 結論
欧州のAIプロジェクト、導入と並行してガバナンスを重視
欧州委員会のAI@ECプラットフォームは、ガバナンス要件が公共部門のAIを支えるソフトウェアをどのように形作っているかを示している。ベルリンに拠点を置くdeepsetは、AI@ECの基盤となるHaystack Enterprise Platformを拡張し、エージェントの開発・運用を最適化および監督と連携させる。
今回の更新では、応答品質の評価、運用コストの比較、問題の調査を行う方法が追加される。NVIDIA Triton Inference Serverは、一般的な情報検索およびランキングサービスを支援する。NVIDIAによると、AI@ECで示された要件には、アクセス制御、監査記録、文書の要約や複数言語にわたる政策分析などの用途に対する安全策が含まれる。
ポーランド、医療・雇用システムを開発
Deloitteは、公共サービスにおける役割がそれぞれ異なるポーランドの2つの取り組みを支援している。eHealth Centreは、NVIDIA DGX BasePODとMONAIを活用したIntelligent Services Platformを開発しており、医療画像の処理を目指す。X線、CT、MRI画像の異常を医師が特定し、緊急性の高い症例を優先できるようにすることを目的としているが、待ち時間がすでに短縮されたことを報告書が示しているわけではない。
これとは別に、家族・労働・社会政策省は、400を超える雇用事務所を対象とするエージェント型ファクトリーを開発している。NVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングを活用し、PLLuM、GPT OSS、Inklingなどのモデルを用いて、求職者を支援する職員が文書を検索し、要約を作成し、デジタルアシスタントを利用できるようにする。
ドイツ、内部向けアシスタントと機密業務に取り組む
Maternaは、従業員が音声で質問し、組織内の知識を検索できるオンプレミス型プラットフォーム「Sinfonie」を導入している。ドイツの州政府行政プロジェクトを基に開発されたこのプラットフォームは、生成AI、音声機能、3Dアバターを組み合わせており、アバターのアニメーションにはNVIDIA Audio2Faceを利用できる。
secunet、NVIDIA、Red Hat、deepsetが参加する別の連携プロジェクトでは、機密情報を扱う組織向けの主権型クラウドサービスを開発している。計画中のサービスは、機密用途の認可を含むセキュリティ機能を備えたsecunetのSINA Cloud基盤を活用する。ただし、これによって提案中のサービス全体が認可を受けていることが示されるわけではない。
各社は、NVIDIAのコンピューティングとNemotronモデル、Red Hat OpenShift AI、Haystackのオーケストレーション、ドイツ国内のデータセンターでsecunetが運用するインフラを組み合わせる計画だ。
合成人口データで地域に即したモデル検証を支援
Locai Labsは、英国全域の人口統計上および地理的な違いを反映する100万件の合成人物データを含むNemotron-Personas-UKを公開した。医療分野での評価や、年齢、教育、地域ごとにモデルの性能に偏りがないかを確認することなどが、想定される活用例として挙げられる。
ドイツでは、研究イニシアチブのSoofiが産業界と政府向けのモデルを開発している。その取り組みにはNemotron-Personas-Germanyが含まれ、2022年の国勢調査に基づき、16州と400郡を網羅する、各レコードに6人分の合成人物データを含む100万件のデータを収録している。NVIDIAによると、このデータセットはNeMo Data Designerを用いて作成され、実在する人々の個人情報は使用されていない。
両国版のデータセットは、シミュレーションベースの評価やトレーニングにNeMo User Simと組み合わせて利用できる。NVIDIAはまた、ポーランドのSpeakLeashおよびスロベニアのリュブリャナ大学と協力して各国向けのデータを追加しており、地域に即したデータセットの整備を予定している。
フランスが調達ルートを開き、ギリシャがインフラを構築
フランスのCANUTは、Twake.aiを基盤とするコラボレーション・ワークスペースの提供企業として、LINAGORAとDocaposteを選定した。2,500を超える対象機関は、個別に入札を実施せずにこの調達枠組みを利用できる。提供サービスには、メール、共有文書、コラボレーション機能が含まれ、フランス国内でホストされるインフラとNVIDIAが支援する音声文字起こし機能を備える。Région Occitanieは優先的な導入拡大パートナーだが、対象機関すべてが採用したことを意味するものではない。
ギリシャでは、KIEFERがDGX GB200を搭載したDGX SuperPODインフラ、オープンウェイトのSopheaモデル、ギリシャ語の検索・音声・アシスタントツールを用いたエージェント型ファクトリーを開発している。このプロジェクトは、組織がエージェントの稼働場所や情報の取り扱い方法を決定できるようにしながら、組織の知識をより利用しやすくすることを目指している。
Codefest、公共部門でのさらなる活用を支援
NVIDIAはまた、Open Models Codefestの上位5チームとして、Pleias、Zehnlab.ai、Disseqt、Algoritmica GmbH、ABA Technologyを挙げた。このプログラムは、医療推論、個別指導、モデルガバナンスなどの用途を対象とする。Deutsche TelekomとT-Systemsは、参加チームが言語モデルをトレーニングし、導入するためのコンピューティング・インフラを提供した。
結論
この報告書は、公共部門のAIが単一の共通した導入計画に沿って進展するのではなく、さまざまな形を取っていることを示している。公開済みデータセットや調達制度の利用機会が、計画段階のインフラや開発中のサービスと併存しており、現地での管理と評価が複数のプロジェクトに共通するテーマとなっている。
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